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2005.2.18 + 2005.3.7[ご指摘追加]
 
 


4S炉認可か…

 約20年ぶりに、米国で原子力発電所が認可されるかもしれないという。(1)
 建設予定場所は、アラスカ中西部の(Fairbanks西440 kmの極寒地域)、人口700人のインディアンの村、Galena(2)である。

 ここではディーゼル発電のため、電気料金が米国平均の3倍に達していたという。

 地域は運営コスト(推算0.1$/KWh)だけ負担すればよいというので、設置申請に踏みきったようだ。もっとも、地域開発は必要だから、補助金を希望しているようだが。(3)

 ・・・30年間燃料交換不要の4S炉[Super Safe, Small, & Simple]をアラスカに設置しよう、との話は前からあったが、地域がようやく動きだした。
  → 「小型原子炉競争 」 (2004年9月22日)

 原子力産業再興という命題を別にすれば、米国政府が認可する可能性は高いのではないだろうか。
 要件をほぼ満たしているからである。

 4S炉は燃料交換不要で特段の運転員無しで運転できる。このことは、人のミスによる事故がほとんどあり得ないことを意味する。
 特に、制御棒レス・ポンプレスな点はウリである。駆動部の磨耗や疲労が考えにくいからだ。
 ナトリウム使用という点だけは心理的な心配のタネではあるが、原理的に安全な炉であることは間違いあるまい。

 もっとも、米国政府(DOE)の一番の関心時は、こうした安全性というより、安全保障問題だろう。
 その点では、この炉は合格である。核物質は炉内に封印されているからだ。常時IAEAによる管理(衛星通信)が可能である。

 実は、この2005年2月3日アンカレッジ発Reutersのニュースに驚かされたのは、最後の発言引用部分である。[末尾の「ご指摘」参照のこと]

 “Why is Toshiba doing this, giving it away for free, trying to foist this experimental technology on rural Alaska when they can't even license this in Japan?”

 日本のような人口稠密地域では、いくら安全だからといっても、小型原子炉にたいしたメリットはない。消費地に設置できないからである。
 テロ、災害、事故、どの観点で見ても、水力や火力施設の方が危ないだろうが、それは常態での話である。寿命後や、考えられない事態が発生すると、原子力の場合復興の目処がたたない。従って、万一の際に地域封鎖可能な地域に設置するのは大原則である。
 日本では、そんな地域なら風力で十分である。

 という話もあるが、なんといっても、恐れ入ったのは、「無料」という点である。

 う〜む。

 日本が国連常任理事国になれたら、こうした炉は世界に飛ぶように売れるだろうが、なんの後押しもできそうにない国からの挑戦では余りに荷が重過ぎる。

 --- 参照 ---
(1) http://today.reuters.com/stocks/QuoteCompanyNewsArticle.aspx?view=CN&symbol=6502.T&storyid=69198+04-Feb-2005+RTRS
(2) 寒そうな写真: http://www.city-data.com/randomPics.php
(3) Matthew L. Wald:「Alaska Town Seeks Reactor To Cut Costs Of Electricity」New York Times 2005年2月3日(有料)

 --- 4S炉事業をご存知の方からの「ご指摘」 (2005年3月7日) ---
 ロイター報道の“無料”という話は「・・・事実ではありません。」
 「関係者の話では、ガリーナ市がこの情報の元になったニューヨークタイムスに訂正を求めているとのことです。」
 「民生用の原子炉で米国NRCの認可得ることは非常に難しく(各種実験、試験などが要求されます。)、簡単には実現しないと思います。」


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